BRUCE SPRINGSTEEN 『DEVILS & DUST』
2005年 05月 16日
ブルース・スプリングスティーンの、3年ぶりの新作。
前作との間に、ベスト盤が発売になっているので、久々という感じはしないが、前作がTHE E STREET BANDを率いての”ロックン・ロール”アルバムであったのに対して、本作は最小限のメンバーで録音されている。
前評判では、『NEBRASKA』や『THE GHOST OF TOM JOAD』に近いと言われていたが、個人的な印象では、『TUNNEL OF LOVE』に最も近い印象を受けた。
それでも、彼の作品の中では、やはり地味な印象は否めないが、絶望的な暗さはない。
今作は、ブルース自身の、ヴォーカリストとしての表現力が最大限発揮されている、という印象を受ける。
もちろん、今までもパワーで聴く者を引き込んだり、感情を表現することには格別の能力があったが、時にそれは強引さを垣間見せていた。
しかも、『THE GHOST OF〜』のような作品では、日本人の私などは全く理解の及ばない内容であって、正直あまり強い印象を受けることはなかった。
それが、今作では、曲毎に歌い方を変えたり、ヴォーカルトラックの音量を変えたりして、自然に曲が聴けるような工夫がなされている。
今更、ブルース・スプリングスティーンに対して、評価うんぬんもないが、この作品は、アルバム自体のクオリティが高いだけでなく、間違いなくどの曲も単独で素晴らしいということが言える。
それは、シングル・カット出来る、という意味ではなく、全曲がそのわずか3〜5分程で短編小説のように完結しているということ。
確かに、派手さはないが、一度聴いただけでもその良さは十分感じ取れるし、何度か聴き続けるうちに、また新しい発見がありそうな、じつに味わい深い作品である。
by saka-zuu
| 2005-05-16 21:31
| MUSIC